Post-Consumer Recycle Waste CPhemical Recycling Technology& Business Database 次世代ポリオレフィン総合研究 Vol.16 別冊論文 廃プラ原料 世界のケミカルリサイクル 技術・事業データベース (全世界編-日本を含む)2025年-2026年版 第一部

本誌は,日本ポリオレフィン総合研究会会誌「次世代ポリオレフィン総合研究 Vol。16」の第4部「統計と調査」に属する論文記事を,データ量が多いため,別冊(PDF版,ネット閲覧書籍)という形で発行するものです。
 別冊ではありますが,研究会会誌 Vol。16 に採択された調査・研究論文です。その内容は,現在の大きな環境問題の1つである「廃棄プラスチックのリサイクル」に関するもので,特に「ケミカル・リサイクル」に関わる調査です。

 ポリオレフィンは,様々な物性上の長所を持ち,加工性が特に優れ,毒性のない安価な材料として,包装材料をはじめ様々な用途に欠かすことのできない資材になり,半世紀間にも及んで大量に消費されてきました。しかし,有効に使用される期間は総じて短く,いわゆる使い捨てという部分が多いのも事実です。他の汎用樹脂を含め,廃棄されたプラスチック(以下,廃プラという)による環境汚染は長らく  「現代の公害問題」といってもよい課題であったわけですが,近年,カーボンニュートラル(以下,CNという)という思想からも指摘されているように,廃プラ問題は身の回りで毎日起こっている灯台下暗し的問題と言えます。にもかかわらず,日常生活にとってそれだけ必須材料になっている世界のポリオレフインの消費と生産量は,今現在も伸長しています。中後進国での廃プラ汚染問題は,今後ますます深刻になるでしょう。

 2025年8月上旬、スイスのジュネーブで開催された国際プラスチック条約(Global Plastic Treaty)の国家間交渉は、22024年開催され,合意を目指した前回の釜山交渉に続いて,最終的な合意文書に至らず失敗の結末で閉幕しました。焦点だった新品プラスチック生産量を制限することを盛り込んだ条約案に対して、プラスチックの主要生産国が反対に回り、対立の溝は埋まらず合意には至りませんでした。今の米国政権は、一次プラスチック生産と汚染との関係は認められないと主張する立場を取っています。 今後の会合日程や開催地は未定ですが、各国の従来コミットメント(廃プラ問題の解決は必須ということ)は維持されています。 

 2025年の最近,欧米で,中小規模リサイクラーの倒産,また大手化学企業が主導しているリサイクルプラント(特に,ケミカルリサイクル)建設計画が中止,棚上げされる事件が少なからぬ件数で起きています。これらの事件の主因は,大量の安い廃プラ処理品が国外から輸入されていること,再生品プラの国内価格の安さ,EC 本部のリサイクル規制が非現実的で厳しすぎること,外からの移住者による中途半端な処理工場の存在,などが挙げられています。本問題でも,国際的な政治経済情勢が,大きな影響を投げかけていることがわかります。

 廃プラ汚染対応戦略の一つにリサイクルがあります。廃プラのリサイクルの解決法は多岐にわたりますが,その基本はメカニカル・リサイクル(以下,MRという)であり,今後もリサイクル業務の中心的位置にいることは間違いなありません。しかし,対処相手の廃プラは雑然として混合汚染があるものであり,そのリサイクルの手法はさまざまに工夫された態様が存在しますが,リサイクル事業は,その地域の経済社会実態に大きく左右されていおり,どんなプロセスが自己の事業に適しているのかは即断するのが難しいものです。
 MRは,混載廃棄物処理の基本的な解決法ですが,その原料から,複雑で精緻な「事前選別・洗浄工程」を経なければ,実際再使用できる材料を抜き出すことはできません.事前選別に注力すれば,選択率は減りリサイクル量は減るし,選別でラインから排除され不適物の量は増大する一方となります。つまり,廃プラを処分するに主導方法のMRに頼ることは限界ががあるということです。
このMRの限界を補うことができなければ,焼却や埋立のような,環境悪化の元凶に陥るやり方しかありません。

 従って,このMRの限界を補う手法が必須であり,その有力な手法として,近年クローズアップされているのがケミカルリサイクル(以下,CR と言う)です。CRは簡単に言えば,廃プラ樹脂の高分子連鎖を切断し,高分子構成単位,またはモノマーに戻す作業です。CRには様々な手法が提案されており,一般的にはコストがかかると言われますが,今後進展させてゆかねばならない分野です。
 その技術開発はスケールアップも含めて,現在世界で200件以上の案件が進行中ですが,今後,世界中でCRプラント計画がどの程度実現していくかは楽観できません。その原因は,結局,ケミカル処理工程が複雑でコストが相当高いからです。モノマーや構成単位までに戻して再重合するので,品質上の問題は全くないのですが,従来のような石油ベースの樹脂とのコスト比較では,明確な公的支援がなけれが成り立たないと思います。

 本書は,世界における廃プラのケミカルリサイクルの技術と建設計画,CR の事業動向をまとめたものですが,散在するそれらの技術・プラントのデータ数は多く,情報を集約するのは容易ではありませんでしたが,できるだけ信頼のおける情報をもとにまとめました。本書の作成基準は 序-ページ に記しておりますが,使用データ情報は 2021年頃から 2025年9月中旬までに公開されている文献からの引用を主体として,著者の信頼おける情報筋からの聴取,実地見学などから取捨選択したもので成っています。
引用文献は序-7 にまとめています。
 なお,多くの情報を取捨選択し,筆者の推定や考察によって編集している部分が多いので,データの正確性についての保証は困難であることをご了解いただきたくお願い致します。 
 また,本書は 第一部,第二部に分かれており,「廃プラ ケミカルリサイクル 技術・事業データベース  2025年-2026年版」の第一部をここに刊行するもので,第二部は2025年12月に発刊予定です。それも合わせてご期待ください。
 最後に,別冊の形での刊行をご許可いただいた日本ポリオレフィン総合研究会の寺野会長および運営委員の方々に深く感謝致します。日本ポリオレフィン総合研究会の今後のますますの発展を祈念致します。

番号
NP009e
発行年月
2025/10/10
体裁
判, 100ページ
フォーマット
電子書籍(eBook)
定価
44,000 円(本体40,000円+消費税、送料込)
冊数:

執筆者

編著者・発行者
郷 茂夫  プリディクション郷事務所
日本ポリオレフィン総合研究会 www.sposi.gr.jp

目次

第一部 廃プラ ケミカルリサイクルにおける技術保有者、事業者データベース
1.ケミカルリサイクルの廃プラ分解・クリーン化技術の保有者,提供者のリスト
2.ケミカルリサイクルの事業計画・推進者と現在の事業実施者のリスト

第二部 廃プラ ケミカルリサイクルにおける事業取組み環境の変化
3.世界のケミカルリサイクル事業遂行に伴う必要性と障壁
4.ケミカルリサイクルの分解処理プロセス,クリーン化プロセスの事例集